ヒャッキマップ

日本の妖怪・怪談伝承を、夜の地図で巡る

熊本県の妖怪・怪談伝承 10選

熊本県に古くから伝わる妖怪・怪談・伝説のスポットを、出典つきで紹介する。気になる伝承は「夜の地図」で実際の場所をたどってみよう。

あそのきはちとしもみやのひたきしんじ

阿蘇の鬼八と霜宮の火焚神事

📍 阿蘇市 役犬原 霜神社 🕰 神代 怖さ 🏮🏮🏮
阿蘇開拓の神・健磐龍命は的石へ向けて日々百本の矢を放ち、家来の鬼八に拾わせた。疲れた鬼八が矢を足で蹴り返して怒りを買い、逃げ回った末に討たれたが、その怨みは季節外れの霜となって阿蘇谷の作物を枯らした。困った人々は役犬原に霜宮を建てて鬼八を祀り、「斬られた傷が冷える」という霊を温めるため、少女が59日間火を焚き続ける火焚神事を今に伝える。国指定重要無形民俗文化財である。
出典・伝承元: 霜神社の由緒・阿蘇の農耕祭事「火焚神事」(国指定重要無形民俗文化財)
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あまくさのあぶらすまし

天草の油すまし

その他の妖怪 📍 天草市 栖本町河内 油すましどんの墓 🕰 不詳(昭和初期採録) 怖さ 🏮🏮
天草の栖本から下浦へ抜ける草隅越(くさすみごえ)の峠道には、油瓶を下げた妖怪・油すましが出たと伝わる。昭和初期の『天草島民俗誌』には、孫を連れた老婆が「ここには昔、油瓶を下げたものが出たそうな」と話した途端、「今も出るぞ」と当人が現れたという話が採録されている。栖本町河内の道沿いには「油すましどんの墓」と呼ばれる石像が立ち、油搾り名人の供養塔ともいわれ、今も地元で親しまれている。
出典・伝承元: 浜田隆一『天草島民俗誌』
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あまくさのいそおんな

天草の磯女

海の怪 📍 天草市 牛深町 牛深港 🕰 不詳 怖さ 🏮🏮🏮🏮
夜、港に船を泊めると、海から髪の長い女が艫綱を伝って忍び上がってくる。眠る船人にその長い髪をふわりとかぶせ、髪の先から血を吸い取って命を奪うという。天草の漁師たちはこれを磯女と呼んで恐れ、見知らぬ浦に泊まる夜は艫綱を海へ垂らさず錨だけで船を留める習わしがあったと、昭和初期の民俗誌に記録される。漁業で栄えた牛深をはじめ、天草の沿岸に語り継がれた海の怪である。
出典・伝承元: 濱田隆一『天草島民俗誌』ほか天草の口碑
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えいこくじのゆうれいかけじく

永国寺の幽霊掛軸

幽霊・怨霊 📍 人吉市 土手町 永国寺 🕰 室町時代 怖さ 🏮🏮🏮
「ゆうれい寺」の名で知られる人吉の永国寺には、開山の実底超真和尚が描いたと伝わる幽霊の掛軸が残る。寺のそばの淵に身を投げた女性が亡霊となって現れたため、和尚がその姿を描いて本人に見せたところ、己の姿を恥じて念仏を授かり成仏したという。境内には亡霊が現れたと伝わる幽霊淵が今も残り、夏には掛軸の実物が公開されて多くの参拝者を集める。
出典・伝承元: 永国寺の寺伝
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くまがわのくせんぼうがっぱ

球磨川の九千坊河童

河童・水の怪 📍 八代市 本町 徳淵の津(河童渡来の碑) 🕰 江戸時代 怖さ 🏮🏮
その昔、中国から九千匹もの河童の一族が海を渡り、八代の徳淵の津に上陸したと伝わる。頭領の名は九千坊。球磨川流域に住み着いて悪さを重ね、加藤清正が九州中の猿を集めて攻めさせたため筑後川へ移ったという。江戸中期の『本朝俗諺志』にも記された古い伝承で、前川橋のたもとには河童渡来の碑が立ち、初夏には「オレオレデーライタ」の囃子で川まつりが催される。
出典・伝承元: 『本朝俗諺志』・八代の河童渡来の碑
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ごかのしょうのやまわろ

五家荘の山童

山の怪 📍 八代市 泉町 五家荘 🕰 不詳 怖さ 🏮🏮
肥後の山々には、子どもほどの背丈で一つ目とも赤ら顔ともいわれる山童が棲むという。木こりの伐り出しを手伝っては握り飯や焼酎をねだり、約束の礼を欠かすと祟るが、義理堅い性分とも伝わる。秋の彼岸に川のガラッパが山へ入って山童になり、春にはまた川へ帰ると語られてきた。平家落人伝説の残る五家荘をはじめ、球磨・芦北の山間で広く信じられた山の隣人である。
出典・伝承元: 肥後・球磨地方の口碑(民俗誌)
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ねこだけのねこのおう

根子岳の猫の王

狐狸・獣の怪 📍 阿蘇市 一の宮町 根子岳 🕰 不詳 怖さ 🏮🏮
阿蘇五岳の東端、ぎざぎざの山容で知られる根子岳は、その名の通り「猫の王」が棲む山と伝わる。九州の猫は歳を経ると飼い主の元をそっと離れてこの山へ「猫岳参り」に登り、修行を積んで化ける力を得るという。山中で猫の宿に迷い込んだ旅人が舐められて毛が生えかけた、といった昔話も阿蘇一帯に残る。猫好きにとっては一度は拝みたい霊峰である。
出典・伝承元: 阿蘇地方の口碑
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ひごのうみのあまびえ

肥後の海のアマビエ

その他の妖怪 📍 熊本市西区 有明海沖(肥後の海) 🕰 江戸時代(弘化3年) 怖さ 🏮
弘化3年(1846)、肥後の海に夜ごと光るものがあり、役人が出向くと、長い髪にくちばし、鱗の体に三本の足という異形の者が海中から現れた。「私はアマビエ。豊作が続くが病も流行る。私の姿を描いた絵を早々に人々に見せよ」と告げて海に消えたと瓦版は伝える。出現地は肥後の海とだけ記されるが、疫病除けの絵姿は全国に広まり、令和の疫病流行でも再び脚光を浴びた。
出典・伝承元: 弘化3年の瓦版(京都大学附属図書館所蔵)
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みょうけんぐうのきだがめ

妙見宮の亀蛇「ガメ」

龍・大蛇 📍 八代市 妙見町 八代神社(妙見宮) 🕰 平安時代 怖さ 🏮
八代の妙見神は遠く大陸から海を渡って来たと伝わり、その乗り物とされるのが亀と蛇の合わさった霊獣・亀蛇である。土地では「ガメ」と親しまれ、長い首を伸ばして暴れるように舞う姿が名物となった。毎年11月の八代妙見祭では巨大なガメの造り物が城下を練り歩き、この神幸行事はユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」にも登録されている。海を渡る神の記憶を今に伝える縁起の霊獣である。
出典・伝承元: 八代神社(妙見宮)の縁起・八代妙見祭の神幸行事(ユネスコ無形文化遺産)
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やつしろかいのしらぬい

八代海の不知火

海の怪 📍 宇城市 不知火町永尾 永尾剣神社 🕰 古代(景行天皇の御代) 怖さ 🏮🏮
景行天皇が九州巡幸の折、闇夜の八代海で行く手を照らす無数の火に導かれて岸に着いたが、火を焚いた主は誰も知らなかった――地名「不知火」の起こりと『日本書紀』に記される怪火である。旧暦八月一日の未明、沖に現れた光が横へ増えて並ぶといい、龍神の灯とも海の怪ともささやかれた。海中に鳥居が立つ永尾剣神社は古くからの観望の名所で、怪火の名は今も町名に生きている。
出典・伝承元: 『日本書紀』景行紀・宇城市の郷土資料
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