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日本の妖怪・怪談伝承を、夜の地図で巡る

奈良県の妖怪・怪談伝承 10選

奈良県に古くから伝わる妖怪・怪談・伝説のスポットを、出典つきで紹介する。気になる伝承は「夜の地図」で実際の場所をたどってみよう。

おおみねさんのぜんきとごき

大峯山の前鬼と後鬼

📍 吉野郡天川村 洞川 大峯山(山上ヶ岳) 🕰 飛鳥時代 怖さ 🏮🏮
修験道の開祖・役行者が大峯山を開いた際、人里を荒らしていた夫婦の鬼を法力で調伏した。改心した二鬼は前鬼・後鬼と名づけられ、生涯行者に付き従って山を守ったと伝わる。その子孫は大峯山系の麓の前鬼の里に住みつき、千三百年にわたって修験者を迎える宿坊を代々守り続けているという。鬼が人に仕え、その子孫が今も続くという稀有な伝承である。
出典・伝承元: 役行者伝承(『日本霊異記』ほか)・前鬼の里の宿坊の由緒
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おばみねとうげのいっぽんだたら

伯母峰峠の一本だたら

山の怪 📍 吉野郡上北山村 伯母峰峠 🕰 江戸時代 怖さ 🏮🏮🏮🏮
大台ヶ原に近い伯母峰峠には、一つ目一本足の妖怪・一本だたらが出ると恐れられた。その正体は、猟師に射止められた、背に熊笹の生えた大猪・猪笹王の亡霊と伝わる。鬼と化して峠の旅人を襲ったため、丹誠上人が地蔵尊を勧請して封じたが、年に一度、十二月二十日だけは封印が解ける。この日は「果ての二十日」と呼ばれ、峠を越えてはならないと戒められた。
出典・伝承元: 吉野・熊野地方の民間伝承(『大和の伝説』ほか)
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かつらぎさんのつちぐも

葛城山の土蜘蛛

その他の妖怪 📍 御所市 北窪 高天彦神社・蜘蛛窟 🕰 神代(神武東征の頃) 怖さ 🏮🏮🏮
神武天皇の東征のおり、葛城の地には朝廷にまつろわぬ「土蜘蛛」と呼ばれる者たちがいた。天皇は葛のつるで編んだ網をかぶせて彼らを討ち、これが「葛城」の地名の由来になったと『日本書紀』は伝える。後世には葛城山に棲む蜘蛛の妖怪として語られ、能『土蜘蛛』では源頼光に退治される。高天彦神社の近くには、土蜘蛛を葬ったと伝わる蜘蛛窟が残っている。
出典・伝承元: 『日本書紀』・謡曲「土蜘蛛」
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がんごうじのがごぜ

元興寺のガゴゼ

📍 奈良市 中院町 元興寺 🕰 飛鳥時代 怖さ 🏮🏮🏮
飛鳥時代、元興寺の鐘楼に夜な夜な鬼が現れ、人を襲ったという。雷神の申し子として生まれた怪力の童子(のちの道場法師)が鐘楼で夜明けまで鬼と格闘し、髪をむしり取って退散させたと『日本霊異記』は伝える。この鬼は「元興神(がごぜ)」と呼ばれ、子どもを脅す妖怪の代名詞として「ガゴゼ」の名が全国に広まった。世界遺産・元興寺には鬼にちなむ絵馬や史料が残る。
出典・伝承元: 『日本霊異記』
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きんぷせんじのかえるとび

金峯山寺の蛙飛び

その他の妖怪 📍 吉野郡吉野町 吉野山 金峯山寺 🕰 平安時代 怖さ 🏮🏮
平安の昔、蔵王権現をあなどった男が大鷲にさらわれ、断崖の上に置き去りにされた。哀れんだ高僧が法力で男を蛙の姿に変えて崖から下ろし、蔵王権現の宝前で祈祷して人間に戻したという。この故事にちなむ蓮華会・蛙飛び行事が今も毎年七月に営まれ、太鼓台に乗った大きな青蛙が吉野山を練った末、蔵王堂で人の姿に返る場面を演じてみせる。
出典・伝承元: 金峯山寺蓮華会・蛙飛び行事の縁起
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くめせんにんのついらく

久米仙人の墜落

その他の妖怪 📍 橿原市 久米町 久米寺 🕰 奈良時代(伝承) 怖さ 🏮
吉野の山で修行して空を飛ぶ神通力を得た久米仙人は、飛行の途中、川で洗濯する娘の白い脛に見とれて力を失い、まっさかさまに墜落したと伝わる。のちに都造りの材木運びを神通力で助け、その褒美に得た土地へ建てたのが久米寺だという。『今昔物語集』や『徒然草』にも取り上げられた、人間くさくもどこか憎めない仙人の物語である。
出典・伝承元: 『今昔物語集』・『徒然草』・久米寺の縁起
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げんくろうぎつね

源九郎狐

狐狸・獣の怪 📍 大和郡山市 洞泉寺町 源九郎稲荷神社 🕰 平安時代(伝承) 怖さ 🏮
源義経が吉野へ落ち延びる道中、家臣の姿に化けて静御前を守り抜いた白狐がいたという。正体は、静御前の持つ初音の鼓の皮にされた親狐を慕う子狐で、その忠義に感じ入った義経が自らの名から「源九郎」を与えたと伝わる。この狐を祀るのが大和郡山の源九郎稲荷神社で、歌舞伎『義経千本桜』の狐忠信の物語として名高く、役者も参拝に訪れる。
出典・伝承元: 源九郎稲荷神社の由緒・大和郡山市の観光資料
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さるさわいけのうねめでんせつ

猿沢池の采女伝説

幽霊・怨霊 📍 奈良市 登大路町 猿沢池・采女神社 🕰 奈良時代 怖さ 🏮🏮🏮
帝に仕えた采女が、寵愛の衰えたことを嘆いて猿沢池に身を投げた。帝が池に行幸した際、供の柿本人麻呂が「わぎもこが寝くたれ髪を猿沢の池の玉藻と見るぞ悲しき」と詠み、帝も歌を返して采女を哀れんだと『大和物語』に伝わる。池のほとりに祀られた采女神社の社殿は、身を投げた池を見るに忍びないと一夜のうちに後ろを向いたといい、今も池に背を向けて建つ。中秋の名月には霊を慰める采女祭が営まれる。
出典・伝承元: 『大和物語』・采女神社の縁起
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みわやまのへびがみ

三輪山の蛇神

龍・大蛇 📍 桜井市 三輪 大神神社(三輪山) 🕰 古墳時代(崇神天皇の頃) 怖さ 🏮🏮🏮
三輪山に鎮まる大物主神は蛇の姿をとると伝わる。妻となった倭迹迹日百襲姫命が「姿を見たい」と願うと、神は櫛笥の中の小さな蛇となって現れた。姫が驚いて叫んだため神は恥じて三輪山へ帰り、悔いた姫は箸で身を突いて果て、箸墓に葬られたと『日本書紀』は記す。大神神社は本殿を持たず三輪山そのものを神体とし、蛇の好物とされる卵が今も供えられている。
出典・伝承元: 『日本書紀』・大神神社の伝承
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むろうりゅうけつのぜんにょりゅうおう

室生龍穴の善女龍王

龍・大蛇 📍 宇陀市 室生 室生龍穴神社 🕰 平安時代 怖さ 🏮🏮
室生の山中に口を開ける吉祥龍穴には、雨を司る善女龍王が棲むと伝わる。龍王はもとは奈良の猿沢池にいたが、池に身を投げた采女の亡骸を嫌って春日山へ移り、さらに清浄な室生の地へたどり着いたという。平安時代には朝廷がたびたび勅使を遣わし雨乞いを行った記録が残る。龍穴神社の奥宮として、岩窟は今も鬱蒼たる杉木立の中に祀られている。
出典・伝承元: 室生龍穴神社の社伝・平安朝の祈雨記録(『日本紀略』ほか)
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